【働き方改革 好事例1】アンダーデザイン(株)
会社概要
代表取締役社長 川口 竜広
所在地 〒577-0015 大阪府東大阪市長田3-5-11 TEL 06-6784-3110/FAX 06-6784-7525
ホームページ https://underdesign.co.jp
●創業 1949(昭和24)年 ●資本金 1億5,000万円 ●従業員数 190名
●事業内容 PBX事業、インフラ構築・運用・保守事業、情報システム機能のアウトソース受託事業、ワーク&アウトスペース事業ほか
斬新な空間での「働き方改革」で 残業時間を削減
当社は通信インフラ、ITインフラを提供する 会社です。1949年に旭電気株式会社としてスター トし、現在73期目。もともとは電話工事を手がけていましたが、デジタル、ITの技術を取り入れてインフラの領域を広げ、企業で使われるパソコ ンのセッティングから数万台規模の端末の設定などを行っています。通信で始まった会社ですが、いまはシステム、つまりサーバーからネットワーク、クラウド、ファシリティに至るまで、最先端のITインフラをお客様のビジネスプランに合わせて構築、提供しています。
創業期から取り組んできたPBX(通信機器) 事業では当時から修理、保守、メンテナンスを手 がけており、現在もインフラの構築から納めた後の保守、メンテナンスまで、ご要望に合わせて対応しています。
最近はクラウドやアウトソーシングなどのサービス、テレワークなどに必要なワークツールをお客様の業務内容に合わせてご提案するコンシェルジュ事業なども手がけています。
一番新しい事業としては、空間デザイン事業というものがあります。働く環境すべてをインフラ と捉え、働きやすいオフィス、ビジネス環境すべてをデザインしますということで「ワーク&アートスペース事業」を本格的に開始、昨年10月に建築士を採用し、内製化をスタートしたところです。
中小企業は少子化で人材の採用でも難しい面があるため、昨今は、オフィスに対する見方が変わり、オフィス環境整備の重要性が高まっています。
当社も人材の採用に苦労する中小企業ですが、オフィスをどんどんリニューアルし、ITのインフラ環境を整えることで、会社のイメージや価値を 上げてきたという経緯があります。ですから、企業のブランド力を上げるために、あるいは生産性を高めるためにオフィスを変えていかれることをお客様に提案し、お手伝いする事業を立ち上げたのです。
上司と部下、月に1回の面談が 残業時間の削減に
当社は従業員190名で、事業構成的にも、また 売上・利益ともにPBX事業が3~4割を占めています。
残り6割はパソコン等の展開です。当社のコア事業はPBX(通信機器)の設備工事で、業種自体、残業など長時間労働が問題でした。以前から改善に取り組んできましたが、ここに来て世の中全体が「残業はダメだ」「休みを取りなさい」 という風潮になり、国の制度として時間外労働の上限規制や、年間5日の年次有給休暇の取得などが打ち出され、昔より変わりやすい状況になってきたと思います。
当社では総務が主体になって「時間外勤務軽減推進委員会」というものをつくって、毎月、労働 時間の管理を行っています。年間の最大労働時間を超えないようマネジメントをしているのですが、「働く時間を削減しなさい」というだけでは削減できません。労働時間の中身をちゃんと知っ て、改善箇所のポイントをついて、上司と部下が相談しながら進めていく必要があります。そういう意味で取り組んでいるのが、「月いちミーティング」です。
昨今はとくに現場への直行直帰やリモートワークが多くなっているのですが、月に1回は必ず上司と部下が個人面談をするようにしています。もう5年間ほど続けていますが、社員一人ひとりと 会社のつながりをもっと深めようということがそもそもの狙いです。ですから、直属の上司と部下だけではなく、他部門の上司、管理職とも面談をするようにしています。例えば、東京と名古屋をまたいで、あるいは普段は接触することがない他 部署と、という具合にこちらがセッティングをするわけです。そういう面談をすることで、他職種、 他部門の人たちがどういう仕事をしているのか、どんな働き方をしているのかがわかります。部下のほうも同じ上司とだけの面談ではなく、さまざまな部署の管理職と会話をすることで、感じることもあるかと思っています。
働き方を変えていく上で、社内のコミュニケーションを増やし、どこに問題があるかを「月いちミーティング」を通して、気づいていくという取り組みなのですが、これが非常によかったと思っています。
というのは、上司と部下がまったく関わりあわずに辞めていくということが、以前は少なからずあったと思うのですが、そういうことになる前に、 部下がどんな問題を抱えているのか、指導が足りない場合はどう指導すればいいかなどがわかるようになってきています。これらは一見、労働時間の削減とは無関係なようですが、働き方についてみんなで考え、どうすれば一番いいのか、問題意識を共有するという意味で非常に根本的な取り組みであったと思います。
上司は自分の部下以外の社員とも面談をするのですが、多くて月に6名までで、主任クラスは月に1~2名、課長は4名という具合に上になるほど増えていきます。年間、あるいは2~3年で全社員と話をする格好になります。いうならばマネジメント層みんなで社員みんなを育てるという取り組みです。
「月いちミーティング」という特別な時間をセッティングし、そこで会社のさまざまな管理職と面談をするということですが、会社側で、「この人とこの人を引き合わせたい」とコントロールすることもあります。
部下側からみると、月に1回、管理職のだれかと面談をする機会があるわけです。管理職は「どんな仕事をしているの?」から始まって、相手の社員の話を聞いて、アドバイスもしますが、問題がその1回で解決しない場合が多いので、ヒアリング結果をまとめて、次の面談者に対して「こういうことが課題だと思うので、引き継ぎをよろしく」とまわしていくわけです。問題は聞きっ放しにするのではなく継続して解決する方向に話し合っていきます。面談は文書化して共有しています。それを見てから面談に臨むので、毎回一から話さなくてもいいわけです。
ヒアリングの結果を私も目を通しますので、その文章から「こんなところで、こんな問題が起きていたのか」と見えてくることもあります。管理、 営業、業務等の部門問わず全社でやっていますので、成果につながっていると思っています。
勤怠管理はスマートフォンで行っています。 GPSの機能が付いていますので、どこで、何時に、がわかります。これを10日に1回チェックしていますので、月に3回、労働時間の管理ができて、オーバーしているようなら、アドバイスして時間調整をするようにしています。
このようなことで、全社では年間5000時間、残業時間が減りました。前期は4万2000時間だったものが、今期は3万7000時間でした。残業をするのは一般社員130人ですから、1人40時間ほど削減できたことになります。
この業種では、しっかり管理しないとすぐに オーバーしてしまいます。また、本当は残業しているのに、それをつけないで、残業しなかったことにする、といったことは絶対にさせないようにしています。事実をもって、というか実態をしっかり管理するように注意しています。
打刻は本人がして、位置情報を一応、こちらで見ています。打刻忘れもありますが、それは総務がメールで本人に注意を促しています。
コロナ下でも柔軟に対応、労働時間が減っても賞与はアップ
コロナ下の働き方としては、基本、テレワークを推奨しました。テレワークが出来る人は全員テレワークで、と決め、自粛要請が緩和されてからは、週2回はテレワーク、3日は出勤と決めましたが、それも解除して、いまはテレワークをしたい人は上司と相談した上でOKとしています。
現在は時差出勤を導入しています。通常は8時30分~5時30分までですが、7時30分~、10時~の3パターンにして、密を避ける出勤を促しています。
当社では、リモートワークが出来るシステムに変えてきていますので、コロナだから苦労したと いうことはありません。社内のネットワークに、セキュリティを確保した状態で、iPhoneでつなぐ システムを導入していますので、社外にいても社内のネットワークにアクセスが可能です。これがあるから直行直帰が可能ですし、販売管理システムに関しても、クラウド上にあるので、会社に出て来なくても仕事が出来ます。そういう意味でも、ストレスフリーというか、コロナ下でも対応できる柔軟な制度、環境を社員に提供出来たと思っています。
残業時間が減ると残業手当という収入が減るという面がありますが、当社では、稼いだお金は会社と社員で分け合うという仕組みをつくっています。賞与の支給前に、営業利益を算出して、それを社内留保と社員の賞与に分け、効率よく働くと賞与が増える、残業が減れば減るほど賞与が増えるという制度づくりをしています。
労働時間は減ってきているのに、賞与は確実に上がっているという実績があるので、社員も納得してくれています。
自社をテクノロジーとアートが共存する次世代型オフィスに
当社は2018年に社名も方針も変えました。古い働き方にとらわれることなく、自ら考えて自由に 働く会社になる、ということで「Unlock Freedom」(自由には責任を伴う)という新しいクレドをつくりました。社員それぞれが主体性と 責任感を持って仕事をすることが現在の当社の軸になっています。
働く環境も変えました。やはりワクワクするような仕事場の方がモチベーションも上がりますし、生産性も上がります。
そこで、ワークスペースをもっと創造的な空間に変えようということで事業化したのが「ワーク&アートスペース事業」です。これまでのITイ ンフラにデザインを加えることで、可能性を広げています。
インフラの技術を使うと例えば、大阪のオフィスに居ながら、東京オフィスとつながり、大きなモニターの前に行って、呼びかければ東京の者と会話も出来ます。
倉庫は使い勝手が悪かったり、整理整頓が出来ていなかったりして薄暗いイメージがあります が、当社ではフロアの中心にガラス張りの倉庫を 据え、外部の人にも自慢できるようなスペースに変えています。
さらに、企業理念を空間の中に取り入れ、社員と共有しています。例えば、電話の工事会社だった創業時を忘れないように、と受付の電話を昔の黒電話にして呼び出しができるようにしたり、会社のヒストリーを刻んだ空間を設けて、自分たちのルーツを感じてもらうようにしています。単に働きやすいというだけではなく、理念などいろいろな思いを込めたオフィスにしているのです。
心地よくて、楽しくて、仕事がしやすくて、自分がいる空間を家族や友人に自慢できる会社である、といったことがいまの中小企業に必要だと私は思います。それを自分たちの会社で体現しながら、ビジネスにつなげていこうとしています。
空間だけではなく、ワークスーツ(作業服)なども、社員の声を取り入れて改良するなど、インフラ以外の新しいことにも挑戦しています。これがファッション誌に取り上げられ、そういうことも社員のモチベーションのアップにつながればいいなと思っています。
当社の中期経営計画は150ページぐらいありますが、これを全社員に配布して、現状や今後を知ってもらうようにしています。最近、日経新聞や建築雑誌などのメディアにも掲載される機会が増え、社員の自社に対する認識が変わったり、励みになったりしているようです。
文化貢献や地域との関わりにも意識的に取り組んでいます。通信インフラの会社として何ができるかを、社会にも、社員にも、そしてこれから社 員になる人たちにも見せて、夢を与えることができたらと考えています。大阪オフィスが東大阪にありますので、ここをシェア(イベント)スペースにして、場所代はいただかずに、人が集まり、情報を発信する「東大阪のハブ」に、と考えています。我々としては新しいインフラに触れていただき、将来、クライアントになってくれる方たち と出会えるかもしれないという可能性もあります。「自分たちの会社は常に新しいことに挑戦し ている」と社員のイメージがさらに上がることを 期待して、今後もさまざまなチャレンジをしていきたいと考えています。
(インタビュー取材・文責在編集部)